劇団冷凍うさぎvol.9『ペチカとエトランジェ』(無名劇団 太田雄介)
2016年 06月 02日
30日15:30の回を観させて頂きました。
台詞のテンポがとにかく早く、小気味よく会話が進んでいきます。
しれっと場転していたりするので気が抜けません。
これ、どれだけの観客がついていけてるんだろうと思いながらも、
芝居の流れに振り落とされないように集中して観ましたが、取りこぼした台詞は多く、
だんだん字幕のない洋画を見ているような気になっていきました。
そんなことを考えながら観ていると、もしかしたら分からせる気がないのかも、とも思うようになりました。
分かる人にだけ分かればいい、分からない人は置いていく、とでも言いたげな芝居。
豪華な舞台美術で舞台上に一つのリアルな街を築く。
でもそれだけではなく、街をリアルに描こうとすれば、エトランジェである我々は、
そりゃ彼らの常識が非常識に見えるし、そんなに簡単に受け入れられないのは当然か。
最低限のコミュニケーションと、頭がおかしい(おかしく見える)民衆こそが、
同じエトランジェである主人公を通した観客巻き込み型の街づくりのために必要な要素になっていて面白い。
だから台詞の意味が解らないとか、聞き取れないとか色々いうのは間違いだという気がしてきます。
ペチカとエトランジェ。
「暖炉(ロシア語)」と「外国人(フランス語)」。
意味をもともと知っている人は別として、
ロシア人には「ペチカと******」
フランス人には「****とエトランジェ」
と、わかるところだけ聞きとれて理解ができるのか。
(まぁ主人公が言語を聞き取れない描写は無いけど)
でもどちらでもない人は、「*************」…
主人公が原因で、街を崩壊させる大火事が起こります。
自国の会社の上司から連絡があり、よくやった、記事になるなと褒められる。
あぁ、こっちはこっちでクレイジーな常識の国なんだな。
国が変われば常識が変わる。
常識同士のすれ違いと理解のされなさがこの作品のテーマなのではないのかと思いました。
また、外野から好き勝手なことを言っている、出版業界への皮肉にも見えました。
また、母が病気だと言って忙しなく働きまわる青年。
仕事を勉強できたことが何よりの報酬です!と、一旦お駄賃を拒否する彼、
やがて母の病状をみるのは人任せになり、仕事に生きがいを感じている姿に僕は、働き者の国日本の民衆を重ねました。
国が変われば常識が変わる。常識が変われば、評価が変わる。評価が変われば、立場が変わる。
ホームレスのような身なりの男は何もしていないようでも、民衆から崇拝されている。
立派な格好をしたえらい立場の酋長は、民衆から最悪な評価を受けている。
作中のペットのような扱いを受けていた男も、もともと外国に住んでいて、
言語は話せなくても、民衆の扱いは悪くなかった。
従順でありさえすれば、評価は変わり、この街で暮らしていく事が認められる。
ちょっぴり切ない社会の縮図を見たような気にもなりました。
ストーリー展開とかはおいといてそういった、風刺のためのようなお芝居に見えました。
始まらないドラマが、始まらないまま終わっていく。
ここは物語の舞台ではなく、ただの街なのだから、
劇的なことは、そうそう起きないよ。
そんなもんだよ。そう言われているような気がしました。
そうかぁ(´・ω・`)…
と思いつつ、夜の稽古に向かう僕でした。
無名劇団 太田
by spacedrama
| 2016-06-02 15:00
| 劇団冷凍うさぎ感想