人気ブログランキング | 話題のタグを見る

space×drama2016の感想を様々な視点で載せていきます 。300文字以上の感想を各劇団が書いていきます。皆様もコメント欄に是非お書き下さい!


by spacedrama
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

遊劇舞台二月病「LEFT~榛名ベース到れる~」(広瀬泰弘)


この無謀とも言える挑戦に震える。恐いもの知らずの中川真一のチャレンジにドキドキする。近頃の若手の芝居はまるで覇気がないものが多い。遊びの域にとどまり、それで満足する作品が多い中、彼は常にリスクを怖れず、あり得ないような大胆な挑戦に向かう。バカである。でも、こういうバカさこそが若さの特権だ。ただ、今回はあまりに相手が大きすぎて、自分のキャパシティを超えている。

どんなテーマと向き合っても、破綻を怖れず、素材を自分に引き寄せることで、形を為してきた彼が今回に限って、事実に縛られた。大胆な仮説とか、オリジナルな展開とかを発揮することなく、実におとなしい。歴史的事実の「連合赤軍」に拘らず、ここに見出した自分のテーマ関心をきちんと追いかけたほうがよかった。もちろん事実をベースにする以上安易な創作は許されない。だが、どこでバランスを取るか。それがとても難しいことは事実だろう。実名にするという前提も一考すればよかったかもしれない。ひんしゅくを買ったって構わないから、彼にはもっと自分を信じてもらいたい。ボロボロの芝居になってもいい。今までだって、そうしてきた。なのに、今回スタイリッシュで(彼らとしては、だが)完成度の高い作品を作った。それは、反対に自信のなさの表れのようにさえ見える。

安保闘争がなぜ、つまらない内ゲバになっていくのか。理想は現実の前でどう分解していったか。正しいと信じたことが信じきれなくなったとき、どうすべきか。描くべきことはあまりにたくさんあり、ポイントを絞らなくては、何も描けない。今回の困難はそこに尽きる。ポイントを絞った若松孝二ですら三時間越えの映画になったのだ。(『連合赤軍 あさま山荘への道』)その先例を踏まえて、90分で描こうとしたはずなのに、ピンポイントから攻められなかった。悔しい出来になったのが惜しまれる。ぜひ、リベンジして欲しい。
by spacedrama | 2016-05-27 00:11 | 遊劇舞台二月病感想