「執行の七人」感想(匿名劇壇の福谷)
2014年 06月 15日
とても面白かったです。
僕なんかも、一生懸命、脚本家であろうと四苦八苦していますが、
「執行の七人」には、「脚本」ってやつの技術が沢山詰まってて勉強になりました。
大体の演劇を見るときに、もうハナから楽しもうなんてつもりはほとんどなく、盗んでやろう、勉強してやろうって気持ち満々で見るのですが、今回も同じで、それでも楽しめたのが嬉しかったです。
情報の開示の仕方が鮮やかでため息が出ました。
多分、こういうことを下手な人(僕)がやると、「伏線でっせー!どやぁ!」みたいになるんですけど、
そのあたりがものすごくサラッとしてるんです。
僕が最も痺れたのが、
「双子→不妊治療→発達障害」
という情報公開の仕方でした。
これは偶然この順番なのではなく、考えられてこの順番なんです。
っていうか、一番ベターな順番で。
右に行くほど重大な情報っていうか、重たい情報なんですけど、
それを、「観客が納得できるように持って行ける」のがこの順番なんです。
いきなりね、「私の息子は発達障害で…」って言っても、
なかなか持っていけないんですよ。その、流れに。
下手くそ(僕)はすぐそういうことしてしまうんですけど。
でもね、これ、語弊があると良くないですけど。
ドラマっていう世界においては、不妊治療して双子が出来て片方に問題が、
っていうのは、かなりベターだと思うんです。
そんなに知らないですけど。
事実、これって医学的にもそうなんですよね?
たしか不妊治療をすると双子の確率が上がるって、
で、双子はやっぱり出産のリスクが上がるって。
こういう、現実が基本的にはあるんですけど、
ほら、これ、時系列で言うと、「不妊治療→双子」でしょ。
でも太陽族さんのはちゃんと「双子→不妊治療」に組み替えてるんですよ。
なぜならば、
「あの時あの空間で、双子という情報が最も開示しやすいから」なんですね。
わかりますか。この技術。
これが技術なんですよ。
これだけじゃないですよ。
ほんとに、ものすごくちゃんとした台本だったと思います。
一点の曇りもないんじゃないか、と書いて今思い出した。
やっぱり、人間がこう、狂乱するシーンは難しいね。
あの高圧的な女の人が、怒り狂うところは、どうしたって説得力に欠けて。
でもアソコこそが演劇の神髄なんですよ。
そこを持って行けるのが演劇の力なんですよね。
例えばウイスキーの小瓶でもちょこちょこ飲ませれば、
納得できるシーンになりえたかもしれないですけど。
でも、その「アル中」情報は、あの場では余計ですから。
うーん。難しい。
舞台がうるさくなると、客席はとても冷静になって色々なことを考えてしまう。
(俺だけか?)
(いやでも多数派やと思う)
どうしたらあのシーンに持って行けるだろう。
例えば、雷がすごく苦手とかを足せば行けただろうか。
なんてことを、ずっと考えている。
今はまだ、あんなに上手に脚本を書けない。
でも、あんなふうにうまく書けるようになりたい。
ので、それまで続けていてください。
面白さで勝つってことはありうるけど、
技術ではなかなか難しい。
でも、頑張ります。
(了)
そう、さすまたのくだりなんかはほんと面白かったなあ。
こういう本って、
ほんとにちゃんと勉強しないと書けないと思うんですよ…。
みなさん、こういうの書くって、ほんとにすごいことなんですよ?
by spacedrama
| 2014-06-15 19:05
| s×d2014