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space×drama2016の感想を様々な視点で載せていきます 。300文字以上の感想を各劇団が書いていきます。皆様もコメント欄に是非お書き下さい!


by spacedrama
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『悪魔の見た夢』を拝見いたしました。

いつもお世話になっております。
baghdad cafeの泉です。
劇評致します。
いろいろと棚にあげます。
そして最後には劇評っていうか感想になり果てます。


14日の19時公演を拝見いたしました。
劇凸アイデンティティさんは初観劇です。

この作品を作られた方たちの人間性に興味を持ちました。

とにかく、どのようにしてこの設定、この流れになっていったのか。稽古はどのような状況だったのか。普段は何をしていらっしゃるのか。そんなことが非常に気になりました。純粋に興味を持ちました。

話としては、アングラ界の帝王と呼ばれるピラニア博士の発明、「満足ガール」、モニターとなるニートのひきこもり青年、そして隣人カップル、研究所の人々。彼、彼女らがじょじょに関わりを持ち、ひとつの話になるというような構成。
ストーリーを追うと、本当にこのようなことが現実に起こったならば、それは奇想天外なストーリーだと思います。しかし、見ていて現実に起こりそうには思えない。あまりリアルな感じがせず、かといって物語としてもちょっと無理があるように思えてしまいました。

さらに、これは博士の過去をたどるものなのか?あれ?満足ガールとニートの愛の物語なのか?おや?同棲カップルの愛憎劇?と、どのお話もがきまぐれで、千鳥足のネコのように、こちらを向いたかと思うとあっちへ行ってしまう。
こちら側がこの表現に対してどのような態度をとっていいのかを少し困惑させられました。

原因はどの主題を見せるのか、またそのためにどのような手段をとるのかという選択を、いわゆるお客様に見せる約束ごとにのっとらずに話を進めているからだと思います。
僕は性格が悪いので、いろんなところでつっこみたいと思ってしまいました。冒頭からラストに至るまで平均して聞きたい知りたい尋ねたいというところが高濃度にありました。ですので、表現としては必ずしも完成度が高いとは言えないかもしれません。シーンのほぼ全てが、何というか危ういような・・・。

しかしその危うい感じが、ヘンかも知れませんが、すばらしいと感じてしまいました。

このゆっくりと不安定な竜巻に巻き込まれたような「感じ」は他で感じたことがありません。
人間の脳の中のような、何かをある一定の方向で築き上げるも、ある意味完璧でないものができあがってしまう人間の性、そういったものが濃縮されていたのかもしれません。ストーリーよりも、こういった作品を作られたという事実それ自体に感動してしまいました。
造られたという作為を感じてしまうお芝居よりもそれはもっと人間らしいものだと僕は思うのです。

この脚本を書かれた方の恋愛観はこうで、情に関してはこういう思いを持っていて、性に対する態度はこうなのだ、きっとそうなのだ、いや本当にそうなのか?いやしかし…というような想像がどんどんどんどん沸き起こり、本編と違うところでかもしれませんが、非常に興味深く観劇いたしました。
この意味では本来の意図とは違う部分で盛り上がってしまって大変失礼なのかもしれません。
しかし、それがこのお芝居の魅力だったと僕は思います。そんなお芝居はそんなにないように思います。

好き勝手に言れせていただくならば(すでに言いまくってますが)、ぜひ、このままの感じで突っ走っていっていただきたい。約束ごとなどを学んだとしてもそんなものは裏山に二秒で捨てていただきたい。また一流の表現テクニックを身につけかけても完全に素無視して、すべてをローテンションで振り切りまくっていただきたい。
そうして行き着くところまで行けば、それはもうありえないものになっているはずです。
密かに、しかし声を大にして期待しております。そんな劇凸アイデンティティさんが見たい。その可能性のある劇団さんに出会えてうれしいです。
ぜひ、このいい意味で絶妙な危うさを保ちながら巨大化していっていただきたいです。
by spacedrama | 2009-08-07 03:53 | s×d2009