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space×drama2016の感想を様々な視点で載せていきます 。300文字以上の感想を各劇団が書いていきます。皆様もコメント欄に是非お書き下さい!


by spacedrama
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劇団ガバメンツ「ハイヤーズ・ハイ」(務川)

劇団ガバメンツ「ハイヤーズ・ハイ」
観劇日:2009年7月9日木曜日午後19:30

(感想)
平日の初日夜にもかかわらず、ほぼ満席。ほとんど、同年代の若い観客の様子。椅子席であったのに、椅子も詰めあっていて、両横のお客さんと接触することはちとつらかった。

芝居はシュチュエーションコメディ。
ふたりの脚本家とひとりのタクシー運転手が、ある役者の喪を振り返る会から帰ってきたなかで、この三人がお話を作り始める。深夜のタクシー車内。近年、タクシー強盗とかが騒がれたりするなか、にこやかな運転手さんとお客さんとの話からはじまるというのは思い返してみても爽やか。

「ハイヤーズ・ハイ」。なかなか、いいタイトルだと思います。

この三人が話しをつくりながら、その目の前で役者が演じ見せていく。想像するものと演じるものが同じ空間にみせて、そのうそを観客が了解とっていく。これこそ、演劇であり、面白い劇構造をつくっている。これはいい。でも、はてななのは照明。進行していく世界と演じられている世界をきっちりわけてみせてほしいとおもいました。進行している世界の役者たちが影の扱いをされていて、暗くみえないのは残念。(ただ、シュチュエーションコメディだとおもうのですが、照明の地明かりが暗いのはどうなんでしょう。演出ノートにも映画のような舞台とかいてあるし、もっと背景や日常光はつくり、役者の多様な表情がみえてくるとおもいました。)

 音楽はウディ・アレンが「マンハッタンで使っていたBut Not For Me。はじまりと終わりはお洒落なテイスト。ならば、芝居ももう少しギザぶりで軽く明るく場面を展開してもいいとおもうのですが、タクシーの車内、オフィス、飛行機の機内はいいのですが、旅館、中流家庭の食卓となると、とたんに貧乏臭い。それを狙っているなあと思わないわけでもないが、作者の生活想像世界でかかれている感じがします。もっと、うそをつくことでもいいのではないでしょうか。
少し見方を変えて身近な中流日常のサラリーマン世界なら、わからないことはない。そのなかの生活恋愛喜劇なら、等身の世界だと思います。でも、それではウディ・アレンではないかな。音楽は劇全体のイメージをつくる。もちろん、劇物語の証になる女脚本家のかなわくなった恋心のイメージベースでおいているのはわかるし、その儚さも悲しみもかろやかな響きで伝わってくる。ならばとおもいました。

(劇評)
 感想にもかきましたが、芝居全体の雰囲気の一貫性は興業としてとても大切な見せ方であると思います。芸術的であるより、芸能的であろうとしているところで、気軽に楽しめて、芝居といううそに感動させられていく。

だから、作られていく場面と音楽や照明の効果は大きくなる。

ウディ・アレンでイメージさせるところが女脚本家の秘めたもう叶えられない恋心であり、その反動の主人公のええ加減な男としてのストーリーでも、つくるモチーフはウディ・アレンに基調したものでなければ、洒落た感じが浮かび上がらない。

話そのものは、確かに三人がつくりあげているから、あちゃこちゃ、タクシーの素人運転がはいるから、彼のキャラクターとしての個性が同じ名前しかつけないという平凡さだけで止めてしまうのではもったいない。おじさんで年輩でドラマなら、すぐ時代劇にしてしまうとか。脚本家のふたりのキャラクター差異もあまりはっきりはなく、もっと好みのドラマの趣向の違いがみえるぐらいでなければ、わからない。ストーリーを進行している主役たちなのに、感想にもかいたが照明も脇役に据えては、話の主点がわからない。(もちろん、どんでんを狙うことと思いますが、どこか印象にひっぱってないと、どんでんはただのいきなりのとってつけたになる。)

作られるドラマは確かに大部分をしめているが、作っているほうに語りかけてくる混入もないのでドラマそのものがラストにもあるように深夜のタクシー車内の現実におかれるわけで、演出の意図が作られるドラマにあるなら、これはより虚構性高いファンタジーになるわけで、おそらく、そうではないだろう。

身近な旅館設定のなかに、細かい笑いがあったので、ウディ・アレンは抑えに使い、全体を映画であるなら、東宝喜劇シリーズ風にした方が、もっと全体トーンははっきりしたように思えた。
役者はみんな、役個性としていきいきしていた。でも、初日だったのか、冒頭の三人会話がセリフ回しが聞き取りにくく、部長さんの役者の切れいいセリフ入りまで、もやもやしたのが残念。たくさんの観客をいれていて、小劇場としては窮屈な環境になっているため、つかみは鮮やかでもっとあれば、観客の苦しさはぱっと全体ののりにかわるのではないだろうか。
by spacedrama | 2009-07-22 14:12 | s×d2009